変形性股関節症のスクワット問題
変形性股関節症の方の多くが、運動不足から股関節周囲の筋肉が衰えてしまいこのままでは歩けなくなるのではないか？という不安を持ちます。
「股関節が痛いので筋肉を増やして支えられるようにしたいが、スクワットはした方がいいの？」とよく聞かれます。
先にお答えしてしまうと、当院ではスクワットをおすすめしません。
今回は痛みのあるうちの筋トレの意味、効果についてご紹介します。
正しいフォームでできますか？
この問題をインターネットで検索してみると、やらない方がいいという記事も、やってもいいよという記事もどちらも出てきます。
やらない方がいいという主張は「痛みのある、または痛む恐れのある動作をできるだけ避ける癖をつけてほしい」という基本的な考えを持ちます。変形性の症状を悪化させないためには、生活の中でできるだけ痛みを出さないようにすることが大事です。自ら痛む可能性のある動作を行うことを、特に痛みにお悩みの方が行うのには身体的・心理的なデメリットが大きいです。
やってもいい、やるなら正しいフォームで行いましょうと言われる場合もあります。しかし、本当に正しいフォームでできますでしょうか？
チェックポイント
- 腰を落として膝を曲げ、足首を柔軟に目線はまっすぐと、意識することが多いが大丈夫？
- 変形による左右の脚長差、重心が変わるがその差は考えてスクワットできる？
- 正しいフォームでなければ腰痛も引き起こす可能性があるが、腹筋や背筋に不安はない？
スクワットが筋トレの中でも有名な理由は、自重を使った筋トレの中でも負荷が大きい種目だからです。
負荷が大きいというのはそれだけ効果があるということですが、痛い時に負荷の大きい種目を選ぶ必要性を改めて考えましょう。
そもそも筋トレとは
筋トレとは、筋肉が傷つくようにわざとストレスをかける行為です。脳にとってストレスとは避けるべきものなので、筋トレとは誰にとってもきついものです。
その行為を継続して行うことで、傷を回復させるにあたって「このストレスに耐えられる筋肉を用意しておきたい！」と脳は考えます。だから運動時に成長ホルモンが分泌され回復する時により強い筋肉として再生し筋肉が育ちます。
現時点で傷ついている可能性が高い
変形があり痛みがある時には筋肉や股関節周囲の組織がすでに傷ついていると思ってください。筋トレすることによって傷を増やす事は、自身の回復力・自律神経にも負担がかかります。今ある傷をさらに広げるリスクと隣り合わせのスクワットを率先してやる必要はありません。
心がけたい運動
スクワットができないとなると運動不足の解消ができず余計に不安になってしまうかもしれません。
最低限、股関節が痛くても可能な運動を紹介します。
ドローイン
お腹のインナーマッスルを鍛える呼吸による体幹トレーニングです。やり方は「お腹を引っ込めたまま深呼吸をする」というシンプルな運動です。
仰向けになり膝を立てるか、立って姿勢をよくしてやる方法があります。やりやすい方法で行いましょう。
股関節を直接動かさないですが、お腹には股関節を引き上げ脚を持ち上げる筋肉があり非常に重要です。
まずは吐きながらお腹をへこませましょう。そしてへこませたままで4カウント鼻から息を吸い、8カウントで口から吐きます。
10セットを日に1～3回程度がおすすめです。
かかと上げ
壁やテーブルに手をついて肩幅に足を開いて行うかかと上げです。目線はまっすぐ前に、頭の先から真上に引っ張られるように行います。かかとをできるだけ上に持ち上げてから床につかない程度で下ろしてください。
落とす時の注意点ですが、ゆっくり下ろしましょう。ストンと力を抜くかかと落としの運動もありますが、股関節に痛みがあるうちは力を抜くということがうまくできない方が多いです。無理に力を抜こうとすると却って緊張する場合があります。
ゆっくり下ろすのは負荷が強いので、疲れる前にやめましょう。
この運動は一日に〇回〇セットやるぞ！と決めて行うと疲労度を無視してしまう場合もあるので、その時の体と相談する癖をつけると思って回数は決めずに行ってください。
個人差がありますので、10回とか、5回、3回でも筋疲労を感じるようならそのくらいにします。
連続でテンポよくやるよりは一回一回の姿勢や力の入れ方を丁寧に確認しながらやることで、少ない回数でも効果が出るでしょう。
ドローイン×かかと上げ
お腹をへこませ呼吸に意識を向けながらかかと上げをします。
この運動を行うのは、それぞれの運動がある程度やり慣れてからで大丈夫です。
基本は、力を入れるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うことです。
かかとを持ち上げるときに息を吐き、下ろす時に息を吸いましょう。
おまけ
貧乏ゆすりはいいの？
たまに、貧乏ゆすりがいいって聞いたと言ってやっている方がいます。
これに関してはやっちゃだめとは言いませんが、注意点があります。
貧乏ゆすりをした直後はよかったのに、後になって余計に硬くなる場合があります。
簡単にできるからと、やりすぎてしまう場合に起こります。
時には動かさないことも大事にしてみてください。
