股関節が痛い人の杖の選び方|整体師がおすすめする失敗しないポイント

「歩き始めの一歩が怖い」その痛み、杖で軽くなるかもしれません

階段の一段目に足をかけた瞬間、朝ベッドから立ち上がった瞬間に、股関節にズキッとした痛みが走る。買い物に行くのも億劫になり、外出する回数がだんだん減ってしまった――。変形性股関節症を抱える方から、こうしたお悩みをよく伺います。

「杖を使うのはまだ早い」「杖に頼ったら余計に足腰が弱ってしまうのでは」と感じて、我慢しながら歩いている方も少なくありません。しかし痛みを我慢して無理に歩き続けると、かえって股関節の変形が進んでしまうこともあります。今回は、変形性股関節症の方に向けて、杖の正しい選び方と使い方を専門家の視点からご紹介します。

なぜ杖が股関節の負担を軽くしてくれるのか

歩行中、片足で体重を支える瞬間には、股関節に体重の何倍もの負荷がかかっているといわれています。杖を正しく使うことで、この負荷の一部を腕へと分散させることができ、股関節にかかる負担を大きく減らすことができます。

痛みが軽くなれば歩く距離も伸ばしやすくなり、結果として股関節まわりの筋力維持にもつながります。杖は「歩けなくなった人が使うもの」ではなく、これからも自分の足で歩き続けるための道具と考えていただくとよいでしょう。

杖の種類と選び方

T字杖(一本杖)

ドラッグストアなどでもよく見かける、握りがアルファベットの「T」の形をした杖です。軽量で扱いやすく、価格も手頃なため、症状が比較的軽く、長距離を歩くときだけサポートが欲しいという方に向いています。

4点杖(多脚杖)

杖先が4本に分かれており、着地面積が広いため安定性が高いのが特徴です。杖だけで自立するので、置き場所に困らず、立ち座りの際にも支えとして使いやすい点が魅力です。バランスに不安がある方や、T字杖では心もとないと感じる方におすすめです。

ロフストランド・クラッチ(前腕固定型杖)

杖の上部に前腕を固定するカフがついており、握力が十分でない場合でも腕全体で体重を支えられます。症状がやや進んでいる方や、片手だけでも動作を補助したい方に向いています。

種類安定性向いている方
T字杖普通症状が軽く、まず杖に慣れたい方
4点杖高いバランスに不安がある方、立ち座りの補助が欲しい方
ロフストランド杖高い握力が弱い方、症状がやや進んでいる方

正しい杖の使い方

杖は「持てば安心」というものではなく、長さの合わせ方や歩き方が間違っていると、十分な効果が得られないばかりか、腰や反対側の膝に負担が移ってしまうこともあります。ここでは基本の使い方を場面別に詳しく解説します。

杖の長さの合わせ方

杖の長さの目安は「身長の半分+2〜3cm」です(例:身長156cmなら78cm+2〜3cmで80〜81cm程度)。実際に合わせる際は、腕を自然に下ろした状態で杖先を足の外側斜め前20cmほどの位置に置き、肘が軽く30度ほど曲がる高さに調整してください。伸縮式であれば、実際に数歩歩いてみて違和感がないか確認しながら微調整するのがおすすめです。

杖を持つ手

杖は、痛みのある股関節と反対側の手で持つのが基本です。例えば右の股関節が痛む場合は、左手に杖を持ちます。反対側で持つことで、杖と痛みのある足が交互に地面につき、歩行時のバランスが取りやすくなります。

平地での歩き方(3動作歩行)

股関節に痛みがある場合の基本は「3動作歩行」です。次の順番を意識してみてください。

  • ①杖を前に出す
  • ②痛みのある側の足を、杖と並ぶ位置まで出す
  • ③健康な側の足を、杖よりも一歩前に出す

「杖・痛い足・健康な足」の順で「1・2・3」とリズムをとりながら歩くと、股関節にかかる負担を効率よく分散できます。慣れてきたら、杖と痛みのある足を同時に出す「2動作歩行」に移行すると、より自然なスピードで歩けるようになります。

階段の上り下り

階段では「上りは健康な足から、下りは痛みのある足から」が基本です。

  • 上るとき:杖→健康な足→痛みのある足の順に一段ずつ
  • 下りるとき:杖→痛みのある足→健康な足の順に一段ずつ

手すりがある場合は、手すりを優先して使い、杖は反対の手に持ち替えても構いません。急いで一段飛ばしをするのは転倒のリスクが高いため避けましょう。

立ち上がり・座るときの使い方

椅子から立ち上がるときは、まず杖を軽く体の前方に置いて支えにしながら、健康な側の足に体重をかけて立ち上がるとスムーズです。座るときは、椅子の位置を確認したうえで、杖と健康な足で体を支えながらゆっくり腰を下ろしましょう。勢いよく座ると股関節に瞬間的な負担がかかるため注意が必要です。

日常でのメンテナンス

杖先のゴムはすり減ると滑りやすくなり、転倒の原因になります。溝がすり減って平らになっていないか、定期的にチェックし、早めに交換しましょう。また、伸縮式の杖は締め具が緩んでいないか、使用前に軽く体重をかけて確認する習慣をつけると安心です。

おすすめの杖2選

ここでは、変形性股関節症の方に選ばれることが多い杖を2点ご紹介します。

① アルミMIX四点可動式スモールタイプ(島製作所)

4本の支柱が前後に15度可動する設計で、坂道や凸凹のある道でもしっかり接地し、安定感が得られます。四点式なので手を離しても自立し、細型ネックで握りやすいのも特徴。高さは11段階で調整でき、脚部分を180度回転できるためゴム先が片減りしにくく、長く使いやすい点も魅力です。「T字杖だと少し不安」という方の最初の1本としておすすめです。


② ネオクラシカル伸縮(シナノ)

国産の杖・ステッキ専門メーカー「シナノ」の伸縮式T字杖です。握り部分の下側が細くなった「スリムネック」設計で、握力が弱くなった方でも自然に握りやすいのが特徴。ゲルを内蔵した「やわらGELグリップ」が手のひらへの負担を和らげてくれます。重さは約245gと軽量で、身長に合わせて2.5cmピッチで細かく高さ調整が可能。アイビールックの上品なデザインも人気で、外出時だけ杖を使いたい、まずは杖に慣れたいという方に向いています。


こんな場合は整体院へのご相談をおすすめします

杖を使っても痛みが改善しない、歩くたびに痛みが強くなっている、左右の足の長さに差を感じるといった場合は、杖の調整だけでは対応しきれていない可能性があります。

  • 杖を使っても股関節の痛みが引かない
  • 杖をついている腕や反対側の膝・腰まで痛むようになった
  • 歩く姿勢が左右に大きく傾いている自覚がある
  • 杖を使い始めてから逆に歩くのが不安になった

このような症状がある場合は、我慢せずに一度専門家にご相談ください。股関節の状態やお身体の使い方を確認したうえで、杖の選び方や歩き方を一緒に見直すことで、痛みの軽減や進行予防につながります。

「股関節が悪いから杖を使う」のではありません

ここまで杖の種類や使い方についてご紹介してきましたが、最後にお伝えしたいことがあります。

「股関節が悪いから杖を使う」のではありません。
“これからも自分の足で長く歩くために杖を使う”という考え方が大切です。

杖は『歩けなくなった人の道具』ではなく、『歩き続けるための道具』です。今は少し抵抗を感じていても、正しく選び、正しく使うことで、痛みを我慢しながら過ごす毎日から、また外に出かけたくなる毎日へと変えていくことができます。ぜひご自身に合った1本を見つけて、これからも自分の足で歩く時間を大切にしてください。