学校の脊柱検査で「側弯症の疑い」という通知を受け取ると、ご本人も親御さんも大きなショックを受けるものです。「これからどうなるの?」「手術はしたくない」「整体でなんとかならないか?」と、不安が尽きないことでしょう。
ネット上には「整体で完治する」という極端な宣伝もあれば、「整体は全く無意味」という厳しい意見もあり、何を信じていいか分からなくなってしまいます。今回は、特に学生の方に多い「特発性側弯症」の正体と、整体の現場から見た「できること・できないこと」を正直にお伝えします。
1. そもそも「特発性側弯症」とは何か?
学校検診で見つかる側弯症の約80%を占めるのが、この「特発性側弯症(とくはつせいそくわんしょう)」です。「特発性」とは、現代医学をもってしても「原因がはっきり特定できない」という意味です。
なぜ10代の学生に多いのか?

特発性側弯症は、特に思春期の女子に多く発症する傾向があります。これには「成長期」が大きく関わっています。
急激な骨の成長: 身長がグンと伸びる時期に、背骨の成長スピードとそれを支える筋肉のバランスが崩れ、背骨がねじれながら曲がっていきます。
進行のタイミング: 成長が止まれば進行も落ち着くことが多いのですが、成長期の間は「様子見」をしている間にもカーブが進んでしまうリスクがあります。
ご本人や親御さんの生活習慣(姿勢の悪さやカバンの持ち方など)が直接的な原因ではありません。自分を責めたり、お子さんを叱ったりする必要はないということを、まずは知っておいてください。
2. 整体・カイロプラクティックで「できないこと」:骨の変形を物理的に戻すこと

まず、最も大切な結論からお伝えします。 整体の手技だけで、「骨そのもののねじれや曲がり(構造的側弯)」を物理的に真っ直ぐな状態に戻すことは、医学的に見て極めて困難です。
整形外科では、レントゲン写真から「コブ角」と呼ばれる角度を測定します。
25度未満: 経過観察
25度〜40度: 装具療法(コルセットなど)
40度以上: 手術の検討
この「角度」そのものを、マッサージや矯正ポキポキといった手技だけで劇的に減らすことは不可能です。もし「数回通えば真っ直ぐになる」と断言する整体院があれば、それは医学的根拠に乏しいと言わざるを得ません。
3. 整体で「できること」:痛み・呼吸・生活の質の改善
「骨が戻らないなら、整体に行く意味はないの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。整体には、病院の治療(装具や手術)だけではカバーしきれない「体全体のコンディションを整える」という重要な役割があります。
① 筋肉の緊張緩和と痛みのケア
背骨が曲がっていると、左右の筋肉の使われ方に極端な差が出ます。
曲がっている外側の筋肉は常に引き伸ばされ、筋肉痛のような痛みが。
内側の筋肉は縮こまって硬くなり、血行不良を招きます。 このアンバランスを整えることで、側弯症に伴う「背中の重だるさ」「腰痛」「肩こり」を大幅に軽減できます。
② 「機能的側弯」へのアプローチ
側弯症の中には、骨の変形だけでなく、日常のクセ(足を組む、片足重心など)による「機能的側弯(姿勢性側弯)」が混ざっている場合があります。この部分は整体や姿勢指導によって改善が見込めるため、見た目の姿勢が良くなり、角度の進行を遅らせるサポートになる可能性があります。
③ 呼吸を深くし、疲れにくい体を作る
側弯が進行すると肋骨(胸郭)が歪み、肺が十分に膨らまなくなることがあります。「なんだか疲れやすい」「部活で息切れしやすい」という悩みに対し、胸周りの関節や筋肉を柔軟にすることで、呼吸を楽にするサポートができます。
④ 装具(コルセット)によるストレスのケア
装具療法が始まると、長時間体を固定されるため、別の場所に凝りや痛みが出たり、精神的なストレスが溜まったりします。整体は、その強張った体と心を解きほぐす「止まり木」のような役割も果たせます。
4. 失敗しないための「医療」と「整体」の付き合い方
学生さんの側弯症治療において、最優先すべきは「整形外科での定期的な経過観察」です。
まずは整形外科へ: 専門医(特に側弯症外来がある病院)でレントゲンを撮り、現在の正確な角度を知る。
整体は「サポーター」として: 痛みの緩和、姿勢の意識付け、セルフケアの相談窓口として活用する。
「病院は行くのが嫌だから整体だけで済ませる」というのが一番のリスクです。成長期の進行は予想以上に早いことがあります。信頼できる整体院であれば、必ず「定期的に病院でレントゲンを撮ってくださいね」とアドバイスしてくれるはずです。
5. ご家庭でできるサポート
側弯症と言われた学生さんは、外見への不安や装具への抵抗感など、繊細な悩みを抱えています。
「姿勢を正しなさい!」と言いすぎない: 意識だけで治るものではないため、本人のストレスになり逆効果です。
適度な運動を促す: 水泳やヨガ、体幹トレーニングなどは、背骨を支える筋肉を維持するのに役立ちます(※主治医に相談の上で行いましょう)。
睡眠と栄養: 骨の健やかな成長のために、基本的な生活習慣を整えることが、結果として側弯症の管理にもつながります。
まとめ
特発性側弯症は、今のところ「これをすれば一発で治る」という魔法のような方法はありません。しかし、医療の力を借りて進行を防ぎながら、整体で体の状態を整えていくことで、痛みなく元気に学校生活を送り、将来の不安を減らすことは十分に可能です。
骨の角度という「数字」だけに振り回されず、「今、本人がいかに心地よく過ごせるか」を一緒に考えていきましょう。私たちは、そのための心強いパートナーでありたいと考えています。
