変形性膝関節症の手術はどんな種類があるの?

「このままでは何年後かに手術が必要だね」
当院を訪れる方の中で病院を受診してこのセルフを言われた事がある方がたくさんいます。

当院では変形性膝関節症の進行度合いによりますがまずは保存療法で日常生活が送れるようサポートしていきます。しかし中には外科的な手術が必要になる場合もあります。
今回は手術といってもどのような手術があるのかを解説していきたいと思います。

手術の種類

変形性膝関節症には大きく分けて関節鏡手術骨切り術人工関節置換術の3つがあります。
手術というと人工関節をイメージする方が多いと思いますが進行度や症状に応じて手術方法も変わってきます。
以下にそれぞれの手術の特徴を解説していきます。

関節鏡手術(関節鏡視下手術)


膝関節鏡手術は、膝関節の内部を観察し、修復するための手術方法です。一般的に、大きな切開をせずに、膝の中に細い管(膝関節鏡)を挿入し、カメラと特殊な手術器具を使って手術を行います。

この手術は、患者が軽度から中程度の膝関節の問題を抱えている場合によく行われます。例えば、膝の軟骨が損傷している、半月板が破損している、または関節内の炎症があるなどの症状がある場合に適しています。

手術は次のようなステップで進行します:
①麻酔 : まず、患者は全身麻酔または局所麻酔を受けます。これにより、手術中に痛みを感じることがありません。

②膝関節鏡の挿入 : 医師は膝に小さな切開を行い、その切開から膝関節鏡を挿入します。このカメラは、膝の内部をライブで映像として表示します。

③内視鏡による観察 : 医師はカメラを使って膝の内部を詳細に観察します。膝関節の軟骨、半月板、靭帯などが問題ないかどうかを確認します。

④治療 : 問題が見つかった場合、医師は必要な手術を行います。例えば、損傷した軟骨を切り取ったり、半月板を修復したりすることがあります。必要に応じて、手術器具を挿入して手術を行います。

⑤終了と切開の閉鎖 : 手術が終了したら、医師は膝に切開を縫合し、包帯や創傷を覆うためのガーゼを当てます。

膝関節鏡手術は、通常、比較的短時間で行われ、入院が必要な場合もありますが、日帰り手術としても行われることがあります。手術後はリハビリや適切なケアが必要ですが、多くの患者が手術後に痛みの軽減や機能の改善を実感します。

骨切り術


膝の骨切り術は、膝関節の負担をかける箇所を変える手術方法です。膝関節の負担を軽減し、痛みや機能障害を改善することを目的として行われます。一般的には、変形によるO脚などで、膝関節の荷重が不均衡になっている場合に行われます。

この手術では、膝の骨を切断し、その角度を変えることで負担を軽減します。

骨切り術のメリット

痛みの軽減 : 骨切り術によって、膝関節の負担をかける箇所を変えることができます。これにより、変形性膝関節症などによる痛みが軽減される場合があります。

機能の改善 : 骨切り術によって、膝関節の負担が適切に分散されるようになり、関節の機能が改善されることがあります。これにより、日常生活の動作が容易になることが期待されます。

関節の保存 : 骨切り術は、関節を摘出するのではなく、骨を切断して負担をかける箇所を変えるため、関節を保存することができます。このため、将来的な手術の選択肢が残される場合があります。

若年患者への適応 : 特に若年の患者にとって、骨切り術は人工関節置換術よりも好ましい場合があります。人工関節置換術は寿命があり、若い患者にとっては手術後の寿命を考慮する必要がありますが、骨切り術は関節を保存し、将来的な手術の可能性を残します。

骨切り術のデメリット

手術後のリハビリと回復期間 : 骨切り術は手術後に適切なリハビリと充分な回復期間が必要です。リハビリが不十分な場合、効果が得られない可能性があります。

再発の可能性 : 骨切り術は一時的な解決策であり、膝関節痛の再発がある可能性があります。負担をかける箇所を変えることで、一時的に痛みが軽減されますが、関節の変形や症状の進行が進む場合があります。

手術に関するリスク : どんな手術にもリスクが伴います。骨切り術の手術には感染や出血、神経や血管の損傷などの合併症のリスクがあります。

術後の制限 : 手術後は一時的に活動制限が必要となります。特に手術直後は重いものを持ち上げたり、激しい運動を行ったりすることが制限されます。

人工関節置換術


人工膝関節置換術とは、変形性膝関節症によって傷んで変形した膝関節の表面を取り除いて、人工関節に置き換える手術です。
手術では、膝関節内の痛んだ骨や軟骨を切り取り、代わりに金属やセラミック、プラスチックなどでできた人工膝関節を入れて、膝関節の機能を再建します。

人工膝関節置換術には全置換術と単顆置換術の2種類があります。膝関節全体が痛んでいる場合は全置換術を行い、内側だけが痛んでいる場合は部分的に置換を行う単顆置換術を行います。単顆置換術は術後の回復が早い、違和感が少ないというメリットがあります。

人工膝関節置換術のメリットには、痛みの緩和や歩行・運動の改善、生活の質の向上などがあります。また、O脚の脚が真っ直ぐに伸びて姿勢が良くなることもメリットです。
デメリットとしては、人工関節は人工物なので寿命があり、再置換が必要になる場合がある点が挙げられます。人工関節の寿命は20~30年程度とされています。また、人工関節入れ替え手術は、一回目の手術に比べて難しくなります。

人工膝関節の手術については改めて詳しく紹介する予定です。

まとめ

それぞれの手術にメリット・デメリットがあります。
病院の先生によっても手術方法や手術時期の考え方も異なる場合があるためセカンドオピニオンを聞くことも必要でしょう。
痛みのない快適な暮らしを送るためにも判断を焦らずに自分の脚と向き合い最適な方法で改善を目指してほしいと思います。

また状態によっては手術を回避できるケースもあるので迷っている方はご相談ください。