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人工股関節手術のリスクについて

2021年10月11日 category : 医療情報 タグ:

今回は股関節の人工関節手術を検討している方、もしくは変形性股関節症で将来人工関節になるリスクがある方へ
人工股関節の手術にはどんなリスクがあるかを解説していきたいと思います。

リスクをたくさん羅列すると手術がリスクだらけで恐怖を感じてしまう人もいるかもしれないので断っておきますが
今回紹介するリスクは近年では稀でありほとんどが1%に満たないリスクです。
病院でも徹底したリスク管理を行っていますので年々減少しています。

手術が成功して痛みが解放される人がほとんどですがどんなリスクがあるかも知らずに手術をただ怖がっていたり、ためらっている人も多いと思います。

手術前には歯の治療をする、貯血をするといった事を事前に知っておくことで手術に安心してのぞめる手助けになればと思います。

感染

人工関節の手術中や手術後に感染症を引き起こすことがあります。

傷口から菌が入る事もありますが多くは患者さんの体内にいる菌が人工股関節に付着して関節周囲に炎症を起こすケースです。
歯の治療中に細菌が血液中を流れて感染を引き起こす事もあるため、手術前には歯の治療を済ませておく必要があります。
術後数年してからも感染を起こすケースもあります。

免疫が弱くなっている時などに体内にいる菌が人工関節に付着して突然炎症を起こし脚が腫れてくることもあります。

※発生率:日本整形外科学会の骨・関節術後感染予防ガイドラインによると初回人工関節置換術では 0.2-2.9%で、再置換術になると 0.5-17.3%に増加すると言われています。

脱臼

脱臼するケースとしては深くしゃがんだ時に人工骨頭が後方に脱臼する事が多いです。

しかし最近では人工関節自体の技術的な進化や手術法が後方アプローチではなく前方の筋肉の間から人工関節を入れる前方アプローチが増加して脱臼するケースは減少しています。
激しいスポーツをしたり、予期せぬ転倒などで関節に負荷がかかった時でなければ日常の動作では脱臼する事はほとんどありません。

手術方法によってやってはいけない座り方や動作が変わってくるので手術後に医師に確認しておきましょう。

血栓

人工関節の手術を行うと出血を伴います。

出血すると人間の自己防衛反応で血液を固めようとします。
血が固まりやすいと血栓も出来やすくなります。
この血栓が血流にのって肺に達すると肺の血管がふさがり呼吸困難になり命を落とす場合もあります。
血栓予防のため術後に弾性ストッキングや空気によるポンプを下肢に装着します。

術後すぐにリハビリが開始出来ればリスクも減少します。

アレルギー

人工股関節の材質は金属で作られるため金属アレルギーを引き起こすリスクがあります。

主に人工関節の素材にはチタン合金やセラミックなどアレルギーを生じにくい素材が使われるので実際にアレルギーが発生することは少ないですが金属アレルギーがある方は医師にかならず伝えましょう。

脚長差

臼蓋形成不全や大腿骨頭の変形、軟骨の減少などで左右の脚の長さの違いが出てきます。

一般的には変形がある方の脚が短くなる事がほとんどです。

人工関節の手術時の際には術後この差を揃えるようにシミュレーションをして人工関節を入れます。
しかし何らかの原因で手術後に左右に差が出る事があります。
原因は様々ですが、筋肉の拘縮(筋肉が異常に緊張している状態)や骨盤の不均衡、背骨の側弯などが考えられますが術後のリハビリで徐々に脚長差がそろっていくことも多いです。
それでもそろわない場合は足底板を短いほうの足に入れるなどしてバランスを整える事が大事です。

出血

人工関節の手術には大量の出血があります。術後も血栓予防のための血液凝固剤の使用のためしばらく出血が続きます。
この出血のために患者さんは手術前に輸血用に貯血と言って自分の血液を貯めておく必要があります。
800㎖の貯血が一般的で、この量で足りなくなる事はほとんどありません。

ゆるみや摩耗

人工関節は長年使用していると関節部分が摩擦で材料の摩耗粉が発生します。
この摩耗粉を異物と認識した細胞は反応し人工関節の周囲の骨を溶かしてしまう骨吸収が起こります。
それにより関節に隙間が生じて関節がゆるんでいきます。

痛みが出ていたり歩行に障害が生じている場合には再手術が必要になります。

神経麻痺

人工関節を配置した部分の神経が損傷してしまう事があります。

神経の損傷はしびれ、脱力感、痛みを引き起こす可能性があります。
手術方法によって損傷する神経が変わります。
後方アプローチの場合は坐骨神経を損傷する可能性が高く
前方アプローチの場合は大腿神経を損傷する可能性が高くなります。

疼痛の残存

人工関節の手術後にはほとんどの方が辛かった痛みから解放されます。
手術直後は傷後の痛みやリハビリによる筋肉痛といった痛みを感じることもありますが時間とともにそれも忘れていきます。
しかし、退院後も痛みが継続することがまれにあります。

この痛みの種類は大きく分けると二つあります。
ひとつは手術前からある痛みが残っているケース
手術によって痛みを感じていた関節部分が神経のない人工関節に取って代わるためこの部分の痛みはなくなります。
しかし股関節の周りの筋肉が硬くなり痛みを発していた場合は
手術後も筋肉の強い緊張が残っていて痛みを引き起こすことがあります。

もうひとつのケースは手術後に新たな痛みが発生するケースです。
関節の部分の痛みは消失しているので手術は成功と言えますが時間の経過とともに股関節周辺に痛みが出現する事があります。
この場合はさまざまな原因が考えられます。
手術前の状態とのバランスの変化で筋肉に負担がかかったり、歩き方の悪いくせが残っていてそれが改善されないため
下肢の前面の筋肉やすねの部分が痛くなるケースなど臨床では様々なケースに遭遇します。

まとめ

みなさんいかがだったでしょうか?
この他にもリスクにはあてはまりませんが人工関節の方は注意事項があります。
例えば海外に行く時に金属探知機にひっかかったり股関節を深く曲げられないためヨガでできないポーズがあったり予期せぬ制限を感じる事があります。
ただ事前に知識を持っていれば対処できることがほとんどなので手術を検討している方やすでに手術した方であっても自分の体の一部なので上手く付き合っていくための勉強は必要です。

当院では基本は手術をしない保存療法を目指しますが手術を決断した方に対しても術前、術後のケアを行っています。

病院では手術や入院中のリスク管理は徹底していますが退院後は自分でリスク管理しなくてはいけません。
みなさんにその負担を少しでも減らせるように情報発信をしていきたいと思います。

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